俺が「六角第三高校」にいってからもう数日経ってるのにそれ以降校長に会うことはできなかった。
水を打ったような静けさとはこのことだ。
「六角第三高校」に訪ってという校長のリクエストは、そこまで急ぐことじゃなかったのか? 俺はいわれた翌日に訪ったけど近いうちにって表現は曖昧だな。
校長も――六角第三高校の校長に会ってきてほしいのっていったきり姿を見せないのもおかしな話だ。
寄白さんに話を聞くも――お姉様は会社にいってらしてよ。としかいわない。
あとはなにを訊ねても――知らなくてよ。の一点張り。
そのまま教室の中をちょこちょことうろついては壁やロッカーをコンコンと叩いている。
ちなみにこの行動で四階の異変がわかるらしい。
打診音のわずかな違い気圧の変化でアヤカシの出現時期を予測するという。
まるで名医の触診、職人芸だな。
寄白さんは俺の転校初日にもまったく同じことをしてたけど、あれにも意味があったんだ。
寄白さんへの見方がちょっと変わって軽く尊敬。
校長は数ヶ月前に【株式会社ヨリシロ】の社長に就任して以来「六角第一高校」の校長と掛け持ちしていることを知った。
って、校長って社長でもあったのかよ!?
他生徒から聞いた話じゃ、そのことは「六角第一高校」の生徒なら誰でも知ってる事実らしい。
俺は正直六角市で絶大な力を持ってる寄白家のことをあまり知らなかった。
といっても【株式会社ヨリシロ】が通じるのは大人の世界で、それ以外だと「六角第一高校」の生徒くらいだ。
つまり高校生にはあまり馴染みない会社ってことになる。
俺は、今日もまた寄白さんと九久津に四階に呼ばれていた。
またアヤカシか……気が重い。
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「九久津。さだわらしを四階に呼んだ日に、私とおまえとお姉の三人でシシャの正体を明かす決断をしたんだ。……本当にあいつは使えるんだろうな?」
「大丈夫だって、もう、絵音未ちゃんにも会ってるんだし。シシャの正体も知ってる。いまさらなにもかも忘れてふつうの生活になんて戻れないよ。夢魔も沙田を見てラプラス判定を出した。それに最初L非常階段にいったときにも俺の召喚した”つるべ火”の灯りにも気づいてた。徐々に慣れてきてるのは間違いないよ」
「ふぅ……」
寄白は大きく息を吐いた。
「あいつみたいなやつがどうしてラプラスの悪魔に魅入られるんだ?」
「さあ? 特別な秘密があるんじゃない? だって繰さんのご指名だもん」
「まあ、お姉がいうなら……」
「ただ俺の想像だと転生に関係があると思う」
「ルーツ継承か……? それより九久津体は大丈夫か?」
「……ん? なんのこと?」
九久津のわざとらしい反応にも寄白は真顔だった。
「……魔属性の憑依は控えろよ?」
「ああ、そのことね。大丈夫。俺は人一倍健康に気を使ってるし!!」
「沙田が転入してきた日自我を持っていかれそうになっただろ?」
「まあ夢魔は低級アヤカシじゃないし。しかもあのときは全身憑依だったから。でも美子ちゃん、俺は大丈夫だって心配しないで!!」
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