「ナードはやめてくれっ!?」
「おいナード? さっき九久津が私を壁に運ぶときにパンツ見ただろ?」
「み、み、み見てないです。い、いや、す、すこしだけ見えたかもしれないです……ね。未確認桃色繊維っぽいものが……」
「見えた? じゃなく見ただろ? 不可抗力的にいうな。それになぜ私の今日のパンツがピンクだと知ってるんだ?」
「えっ、それは、だ、だから未確認なんだって。てか死者を倒したらパンツ見せてくれるっていってたよね?」
「なんだと!?――患者を助けるのに理由はない。みたいに――パンツを見るのに理由はない。っていうな。やっぱりおまえはさだわらしだ!!」
校長と九久津は俺らを笑いながら見てるし。
そういえば「さだわらし」って漢字にするんだっけ……? 俺は頭の中でそれに合いそうな漢字を高二の知識で探してみる。
さっそく脳内変換開始……頭に浮かんでくる漢字たち。
すぐに「貞」と「童」が候補として抽出された。
「貞」「童」……なんかトリハダが立つほど嫌な漢字だ。
あ~なんか見たくない二文字。
だから「貞」と「童」なんて漢字がすぐに思い浮かんだんだな。
「貞」と「童」を入れ替えてみる、「童貞」……。
「あっ、童貞!?」
俺は思わず声を出し膝をついた。
「どうした? さだわらし?」
「ど、童貞ってなんだよ!?」
「図星で悔しいか!?」
「ち、ち、ち、違げーし!!」
寄白さんにおもいっきり言葉のカウンターをくらった。
くそっ、絶対パンツ見てやる!!
三秒は凝視してやる!!
すんげー見れば繊維の向こう側だって見えるんだからな。
あっ、体調戻ったから腹もへってきた。
そっ、そうだよ、俺昼休みに海苔弁の法面が崩壊したから昼食抜きだったんだ。
まあ、あの不調は覚醒のためだったんだから夕飯はいっぱい食べようーと!!
「おい、さだわらし。なにニヤけてんだ?」
「えっ、いや、なんでも」
「うそつけ」
「ご、ごめんなさーい」
な、なんで俺が謝る? それは簡単だ俺が下僕だから。
でも俺はようやく憧れに追いつけたんだ。
寄白さんと九久津と一緒に俺もアヤカシと戦っていくよ。
第一章 END