第45話 美子がつけた「あだ名」


「ナードはやめてくれっ!?」

 「おいナード? さっき九久津が私を壁に運ぶときにパンツ見ただろ?」

 

 「み、み、み見てないです。い、いや、す、すこしだけ見たかもしれないです……ね。未確認桃色繊維っぽいものが……」

 「見えた・・・? じゃなく見た・・だろ? 不可抗力的にいうな。それになぜ私の今日のパンツがピンクだと知ってるんだ?」

 

 「えっ、それは、だ、だから未確認なんだって。てか死者を倒したらパンツ見せてくれるっていってたよね?」

 

 「なんだと!?――患者を助けるのに理由はない。みたいに――パンツを見るのに理由はない。っていうな。やっぱりおまえはさだわらしだ!!」

 校長と九久津は俺らを笑いながら見てるし。

 そういえば「さだわらし」って漢字にするんだっけ……? 俺は頭の中でそれに合いそうな漢字を高二の知識で探してみる。

 さっそく脳内変換開始……頭に浮かんでくる漢字たち。

 

 すぐに「さだ」と「わらし」が候補として抽出された。

 「さだ」「わらし」……なんかトリハダが立つほど嫌な漢字だ。

 あ~なんか見たくない二文字。

 だから「さだ」と「わらし」なんて漢字がすぐに思い浮かんだんだな。

 「さだ」と「わらし」を入れ替えてみる、「童貞どうてい」……。

 「あっ、童貞!?」

 

 俺は思わず声を出し膝をついた。

 「どうした? さだわらし・・・・・?」

 「ど、童貞ってなんだよ!?」

 「図星で悔しいか!?」

 

 「ち、ち、ち、違げーし!!」

 寄白さんにおもいっきり言葉のカウンターをくらった。

 くそっ、絶対パンツ見てやる!! 

 三秒は凝視してやる!!

 すんげー見れば繊維の向こう側だって見えるんだからな。

 あっ、体調戻ったから腹もへってきた。

 そっ、そうだよ、俺昼休みに海苔弁の法面が崩壊したから昼食抜きだったんだ。

 まあ、あの不調は覚醒のためだったんだから夕飯はいっぱい食べようーと!!

 「おい、さだわらし。なにニヤけてんだ?」

 「えっ、いや、なんでも」

 「うそつけ」

 「ご、ごめんなさーい」

 な、なんで俺が謝る? それは簡単だ俺が下僕だから。

 でも俺はようやく憧れに追いつけたんだ。

 寄白さんと九久津と一緒に俺もアヤカシと戦っていくよ。

第一章 END