第308話 六角中央警察署


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黒杉工業 代表取締役社長 黒杉太郎 己の罪を償え!!

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 「この罪っていうのがよくわからないですよね?」

 紺色の制服を着た女性警察官がビニール袋に包まれたそのビラを机に置いた。

 袋の右下にはアルファベットのあとに四桁の番号が振ってある。

 女性警官から約二メートル先にある空気清浄機と除湿器が絶賛稼働中で来客者をもてなしている。

 

 「抽象的すぎるんだよな。いいたいことがあるならはっきり書かないとよ。残ってた遺書だって娘を案じることばっかで飛び降りた理由も具体性に欠ける」

 六角中央警察署のなかの一室にいる六波羅ろくはらがいった。

 六角中央警察は六角市の中町にあり、署内には留置場・・・、道場、 取調室、パトカー駐車場、拳銃保管庫、死体安置所までがあって六角市の治安を守っている。

 また、市民の運転免許の更新手続きなどもここで行われる。

 署内にはいくつかの班があるが、ここは六波羅を班長とした六波羅班の部屋だった。

 ただ、六波羅に部下は七人しかおらず、自分を入れた八人を四つに分け一班、二班、三班、四班と呼んでいる。

 六角市には六角中央警察を中心とし、警察官が交替で職務にあたる交番と警察官が家族とともに併設された居住区に住んでいる駐在所がぜんぶで十七カ所あった。

 よって駐在所は市内から放れた守護山の近くにあることになる。

 「娘を心配した内容の手紙だけで遺書だって決めつけるのはどうなんでしょう」

 「なるほどな。題名が”遺書”だからって絶対にこれから死にますじゃないってことか。ただ指紋も筆跡鑑定でも川相総かわいそうの自筆に間違いはなかった」

 「そうですか。でもこの文字をギチギチに詰めたA四の文章には並々ならぬ決意を感じますけどね。本当の目的はビラを撒きたかっただけで飛び降りるつもりはなかったとか?」

 「そういうことか。ビラを撒いたうえで警察に連行され、事情聴取で遺書の存在をにおわせれば、それほどまでに黒杉工業に追い詰められてたって心証を与えられる」

 六波羅は女性警察官の案にいったん、うなずいたがすぐに首を傾げた。

 「にしても手すりに足かけてさらに上空に向かって飛んでるんだぞ? それはどう説明する?」

 「見えないなにかに引かれたとか? あるいはうしろから押されたとか?」

 「オカルトかよ。ただな警察庁の警備部、警視庁の公安部、各都道府県警備部のなかにもそれ専門の部署があるとかないとか。とくに警視庁の公安部の外事課には神隠し専門の部署まであるらしい」

 「神隠しってただの誘拐の隠語じゃないですか」

 「どっちの意味にもとれるだろ。まだ世間おもてには出てないけど実際、偽造通貨を使ったと思われる犯人が留置所のなかから忽然と消えてるんだから。警察庁どころか上級組織の国家公安委員会も大慌てだ。六角中央警察署うちにも他の各警察署にも注意のお達しがきてる。同案件に注意しろってことだろ?」

 「最近、頻発してる。えっと、たしか修文って元号の通貨が使用されてるんでしたっけ。ただ拘置所こうちしょじゃなく留置所りゅうちじょってところがポイントですよね? 留置所は警察署の建物のなかにあるんですから」

 「署内に勾留こうりゅうしてたやつが消えるなんて大問題だろ。その国家公安委員会にも怪しげな専門部署があるっていうしな。いったどうなってんだよこの国の警察は? そういうのは六角市ここのシシャだけにしてほしいよな」

 「川相総かわいそうの飛び降りのときも、その手すりに真っ黒な絵があったって話があったじゃないですか? あるんじゃないですかそういう・・・・の、が。署長とか副署長みたいな幹部ならなにか知ってるかもしれませんよ。昇進しないと知ることのない真実が」

 「まさか。それにあの現場にそんな絵はなかった。あったとしてもその絵がなんだっていうんだよ?」

 「なにって。なにかの影響ですよ。じゃあこれで川相総かわいそうの捜査は終了なんですか?」

 女性警察官が名残惜しそうにいった。

 「そういうことになるな」

 「黒杉社長に直接事情を訊いたわけじゃないんですよね?」

 「ああ、そうだ。人通りの多い六角駅前でビラが撒かれたってことで六角市じもとの新聞社なんかのメディアが取材に入ったけど、川相総かわいそうを問題ありの社員って印象操作して煙に巻いたんだ」

 「だとしても捜査、打ち切るの早くないですか? 黒杉工業ってわりと最近、若手社員の飛び込み事件もありましたよね? 六角駅で」

 「ああ、あれな。話じゃ。飛び込んだあと挫滅ざめつ創の影響で数秒の意識があったかもしれないってことだ。ただあれも事件性はなし。防犯カメラで確認してるから間違いない。誰かに突き落とされたとかじゃなく、むしろ自分で決意し勢いをつけて飛び込んでる。だいいち哀藤祈あいとういのるは遺書を残してなかった。こっちこそ遺書でも残してくれりゃあ、黒杉工業を調べることができたのによ。近隣住民に聞き込みしても、口を揃えていうのは素朴な好青年だとさ」