第452話 火の手 


 /ウスマ、これでいいのかよ?/

 「かまわない」

 /そうか~。俺はもっと戦いたかったけどな。あいつ強かっただろ?/

 「ああ」

 /でもあいつ本気出してないぞ/

 「そんなことは知ってるさ」

 ウスマは守護山に背を向けて遠ざかっていくと同時に前にいる人物へと近づいていく。

 セミロングのウルフヘアに赤いマントをまとい顔の右半分を仮面で覆った男は くくく、と特徴のある笑い声を発しながらウスマの行く先を遮るように立っていた。

 「ロベス。なぜ。ここにいる?」

 「ウスマだけじゃないんだよ。今回声をかけられたのは、さ。くく」

 ロベスは西洋の王国のような紋章が施されているマントをバサっと翻した。

 音に驚いた野鳥たちがいっせいに夜空へと飛び立っていく。

 「なに?」

 「あのかたが何をしようとしているのかそんなことはどうでもいい。ただ与えられた任務を遂行するだけだろ? 俺たちは、さ。くく」

 「なにをする気だ」

 「ちょっとした火遊び」

 ロベスの一指し指から、ぽっと炎が立ち上った。

 それはまだ火種と呼べるほど小さなもので、風が吹けばすぐに消えてしまいそうだった。

 指の先で炎はゆらめきながら、その色を赤から青へと変えていく。

 「これくらいかな。くく」

 ロベスの一指し指の先から中指の先へ、中指から薬指へとまるで火が、意志ある生物のように飛び移っていった。

 小指に灯された火は往復してまた人差し指に戻ってきた。

  {{炎色反応}}:{{カリウム}}

 ロベスの指もろとも手、全体が紫の炎に包まれていった。

 「おい!!」

ウスマとロベスに声を発したのは忍び装束の者だった。

 /お、ちょうどいい。俺が相手するぞ/

 

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 黄金井の体と一心同体となった「黄金の龍」は山の傾斜を這いながら次から次へと木々のあいだを通り抜けていく。

 (空をとぶこの感覚。多くの能力者にもこの飛翔能力があれば、みんなもっと仕事をやりやすくなるんだけどな。なんだ? 死んだ猪か? あっちはキツネ。猟師? いや、これは狩猟りょうじゃない。猟師はこんなふうに動物の命を粗末にしない。ってことは龍が俺に伝えてきた者の仕業か。きっとウスマの主)

 黄金井が守護山の無残な姿の動物の死骸を通り抜け、ついに田んぼの姿を視界にとらえた。

 (いったいなんだ? あのまだら模様のアヤカシは……だいだらぼっちか? 猿飛の報告だとだいだらぼっちの出現は一体だったはず。いつのまにかだいだらぼっちが二体・・に……ん!?)

 黄金井はわずかな変化を感じとって龍の体を急激に体を旋回させた。

 (山に火が。山火事。まずい。まず延焼を止めないと)

 黄金井は加速して高速の風を巻き起こした。

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