第455話 ゼロの召喚術


 え、違い? 違いか~。

 そうだな、いちばんわかりやすい違いといえば、俺には斑模様があって、あっちのだいだらっぼちにはないくらいかな。

 『え、それ本当?』

 え、あ、うん、本当だけど。

 それがどうしたの? いまも腕を見てみたけど泥でできてるし、斑模様になってるよ。

 なにより俺の身長も、最初のだいだらぼっちと同じくらいで、寄白さんと九久津を見下ろしてる。

 こんな高さから人を見る光景なんて人の背の高さじゃ無理だよ。

 『どうやら沙田くんは本当にだいだらぼっちの中にいるみたいね。それと斑模様ね。そう、斑模様、か』

 なにか気になる?

 『私の仮説が正しければ。でも、もっと情報が欲しいかな。沙田くん、もう一回腕をよく見てみて。その斑模様って必ず・・別の斑模様と繋がってない?』

 ん? え、あ、お!!

 うん、つ、繋がってる、繋がってる。

 模様と模様が繋がってる。

 これどういうこと? 腕だけじゃない、太ももとか足も。

 もちろん胴体もだけど。

 『やっぱり』

 やっぱりってことは社さんには、いまの俺の状況がわかってるってこと?

 『まだ憶測の域はでないけれどね。沙田くん。おそらくその斑模様は接合部分なのよ』

 接合? ってこの斑模様は何かと何かがくっついてるツギハギの模様ってこと?

 『そういうこと。これも憶測だけど。泥のアヤカシを基準にするなら。沙田くんの体はかなりの数の泥田坊が結合しているっていう私の見立て』

 ど、泥田坊?

 え、じゃあ俺は体は厳密にはだいだらぼっちじゃなくて、泥田坊の集合体の中にいるってこと?

 『あくまで私の考えよ。沙田くんが何者かのにいる。その状態こそが今の沙田くん状況を知る手がかりになる』

 中にいるのは間違いないと思うけど。

 『その判断は私じゃわからないし、おそらく沙田くん自身もわからないと思う。美子と九久津くんが沙田くんのことをだいだらぼっちだと判定してるのも……』

 判断してるのは、俺の見かけでしょ? 

 『術者が優秀って証』

 術者? 術者ってなに? こ、これは誰かがやってること?

 『おそらくね。そしてそれに私は心当たりがある』

 え、ほんと?

 『ゼロの召喚術』

 ゼ、ゼロの召喚術? なにそれ? 召喚術ってことはこれは九久津の能力?

 『簡単に言えば、召喚術っていうのは自分より離れた場所にアヤカシを呼ぶのが召喚術。腕より少しズレたところにカマイタチを召喚して憑依させれば風の剣になる。さっきのゴーレムだって、九久津くんが九久津くんから遠い私と美子の近くに召喚した。召喚という行為自体もアヤカシ本体じゃなくアヤカシのコピーを自分に貼り付けたもの。召喚憑依能力者は瞬時にそれらの行為を行っている。一瞬のできごとでも、その過程でいくつもの手順を踏んでるのよ』

 あ、それは前に校長に教えてもらったよ。 

 じゃあそのゼロの召喚術ってのは?

 『術者とアヤカシを重なるように。つまりはゼロ地点にアヤカシを召喚すること。ゼロ地点に召喚するということは自ずと、自分自身もアヤカシに憑依することになるの。同化っていうほうが近いかな。ゼロの召喚術なら術者と召喚したアヤカシとの適合率も格段に違うから、いまの沙田くんの言葉がでないって時点でアヤカシとは相当適合してるはずよ。ツヴァイドライをうまく出せないっていうのは沙田くんの本来の能力が抑制さえられているから。それこそドライが手のひらだけしか出せなかったっていうのもそういう理由からかもしれない。沙田くんは本来の能力が使えずにいまは別の能力を使ってるの状態なのよ』

 そんな術式があったなんて。

 九久津なら真っ先に気づいてもよさそうだけど……。

 『どうだろう』

 なんで?

 『だって、私が知ってるかぎりそれができるのは、たったひとり・・・だけだから』

  え、九久津じゃないの? じゃあ誰?

 『堂流くん』

 え、あ、ど、堂流? 

 なるほど九久津の兄貴か。

 『私だって沙田くんに、沙田くんの中に堂流くんがいるって話をきいてなかったらこんなこと思いつくこともなかったわ』

 だよね。

 九久津の兄貴が俺の頭の中言ってた。

 ――ときがきたら君の力を貸してほしい、ってことなのかな?

 『それはないと思うわ。今回は変則的な出来事で堂流くんもこんな状況は予想してなかったはず。それに沙田くんに今までの経緯を聞いたかぎりだと堂流くんの目的はもっと別のところにある。それこそ世界の行く末を左右するくらい大事なこと。どういった理由で堂流くんが沙田くんの中にいるのかわからないけど、そのときのために堂流くんは沙田くんの中に潜んでるんじゃないかな』

 納得だ。

 社さんの憶測は完璧だと思う。

 俺がなんでだいだらぼっちになったのかの謎がとけたよ。

 なにより今回の出来事のキーポイントは九久津の兄貴。

 そう、九久津堂流。

 その存在だ。

 厳密には俺が中にいるのはだいだらぼっちじゃなくて泥田坊の集合体。

 九久津の兄貴が俺の中からゼロの召喚術を使って、最初のだいだらぼっちへの対抗措置でこうしてくれたんだろう。

 つまり俺たちは九久津に兄貴に助けられた。

 

 『しかもただゼロの召喚術だけじゃなく。複数の泥田坊をだいだらぼっちの身体的特徴に合わせて混成召喚させている。これは堂流くんの想像と創造の結果』

 やっぱり噂にきくとおり、九久津の兄貴はスゲーな。

 社さんお願い。

 九久津の兄貴が俺の中にいるって出来事を隠していいから、寄白さんと九久津にこれが俺だって伝えて!!

 『わかったわ。いったん虫の報せを切るわね』

 うん。