第457話 殻


 だいだらぼっちは、自分の体のヒビがさらに深くなっていることに気づかずに、またソーラーパネルを剥がしている。

 まるで子どもが、ソーラーパネルで遊んでいるようだ。

 この田んぼのソーラーパネルは、発電目的のためなのか、市内の負力の浄化のためなのかわからないけど、それがだいだらぼっちの飛び道具になってるんだから皮肉だよな。

 この選り取り見取りのソーラーパネルたちが上級アヤカシの武器になってるんだぞ。

 ――がしゃん。

 だいだらぼっちは、ソーラーパネルに向かって強めのパンチで一撃を加えた。

 今度はなんだ? 単純にソーラーパネルを壊したのか?

 二回目、三回目はただ、空を切るようにからパンチした。

 そのあいだも自分の体からボロボロと土が落ちていることに気づいていない。

 

 というか濡れた犬が体を震わせて水滴みずを飛ばすように、だいだらぼっちも自分の体を必要以上に動かして泥を振り落としてるようにもみえる。

 大きな泥やら砂のように小さな土まで、満遍なく体から剥がれていっている。

 また体の中身が見えてきた。

 肩の先端の土が落ちて露わになった肩。

 え、あれは、なんだ? 緑色、く、草、肩に草が生えてるのか?

 だいだらぼっちは、田んぼに散らばった、ソーラーパネルの破片の中からひとつを手にした。

 大きく振りかぶってソーラーパネルの破片を直線上まっすぐに投げた。

 速度がハンパない。

 まさか、あいつ社さんとエネミーのふたりを狙ってないか? ソーラーパネルの塊を投げたときからそのつもりだったのかもしれない。

 

 両肩の寄白さんと九久津が、俺の両耳があるである場所で、まだ動くなと言っている。

 なんでだ?

 「あいつはまだ殻を破ってない」

 疑問はすぐに九久津が解消してくれた。

 殻? ってことはあの表面の土は、だいだらぼっちの皮みたいのもんなのか。

 だから、ところどころ中身が見えてきてるんだ。

 じゃあやっぱり、さっきまでのだいだらぼっちの行動は自分で自分の殻をはがすための行為。

 とにかく歩き回ったり体を動かしたりして、自然と殻が落ちるようにしてたんだ。

 自分で剥がそうたって、そうそう上手く剥がせるもんでもない。

 「中身が露出てない状態で攻撃しても、こっちの体力の無駄だからな」

 寄白さんも、この言葉で納得する。

 だからふたりとも様子見の時間が長かったのか。

 それは、斑模様のだいだらぼっちであった俺に対してもだ。

 俺も最初は、だいだらぼっちと認識されていた以上、いきなり攻撃されなかったのは俺もまだ殻に包まれたままのだいだらぼっちだと思われていたからだ。

 本体が土の皮で覆われた状態で攻撃しても、中身にダメージを与えられない以上、一時待機して、だいだらぼっちの中身が出てくるのを待つしかない。

 だいだらぼっちは、ソーラーパネルの塊を投げた一投目が狼煙のようにソーラーパネルの欠片を直線上まっすぐ、ときには弧を描くようにしてどんどん投げていった。

 間違いない、こいつは後方にいる社さんとエネミーを狙ってる。

 こいつ自身がべとべとと中にいるエネミーを蹴ったんだし、それに併せて社さんも後ろに飛んでいったのを確認している。

 これも知らせておいたほうがいいな。

 『社さん。今度はソーラーパネルの破片をいろんな角度で、そっちに投げてるから気をつけて』

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 (え、また? さっきのソーラーパネルの塊が偶然じゃないってことね。どうやら私かエネミーがターゲットにされたみたい。ソーラーパネルの塊でも、ソーラーパネルの破片がそのまま飛んできたとしても、私の弦とソーラーパネルは相性が悪い)

 社のはるか上空を、なにかが通りすぎていった。

(だいだらぼっちが、直線上にソーラーパネルを投げたのなら、私たちの遥か上空を破片は通っていく。これは問題ない。やっかいなのは弧を描いて緩やかに落ちてくる破片たち。たぶん私とエネミーがいるであろう場所を予測して、ソーラーパネルの破片を投擲なげてるはず)

 ――ザクッ!!

 エネミーの真横わずか一メートルほどの場所にソーラーパネルの破片が突き刺さった。

 「はう!! ビビったアル」

 「エネミー。気をつけてね?」

 「大丈夫アルよ。これポヨンポヨンしてるアル」

 (……あの高度から、回転したガラスの破片が落ちてくる以上、きっとべとべとごとエネミー自身の体も斬り裂かれてしまう)

 ――ザクッ!! ザクッ!!

 社とエネミーと離れた、別々の場所にソーラーパネルの破片が突き刺さった。

 (ソーラーパネルの塊が飛んでくるほうが、まだ捌くのが楽だった。ソーラーパネルの塊を弦で包んであとに、私たちのいる場所から逸らせばいいだけだから。それでも)

 社は、格子状の編んだ弦を空にいくつも張った。

 (とりあえず、これで凌ぐ)

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