だいだらぼっちは、サーカスのナイフ投げのごとくソーラーパネルの破片を投げつづけた。
ここから離れた先にいる社さんとエネミーを攻撃するのと、自分の体の殻を落とすのを同時にやっている。
どんどん体の殻が剥がれて、だいだらぼっちの中身が露わになってくる。
だいだらぼっちの切れていた脳の回路が繋がったように、だいだらぼっちはひと際大きなソーラーパネルを両手で挟み、サッカーのスローイングの要領で投擲げた。
縦回転。
あれって空から電動カッターが降ってくるようなもんだろ?
こいつ相手にどうやったらダメージを与えられるかを計算してる。
社さんとエネミー大丈夫かな?
『社さん。今度はだいだらぼっち縦回転でソーラーパネルを投擲げたから気をつけて』
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(え、それって、ほとんど回転式の刃物じゃない? だとしても弦を張らなきゃ)
「エネミー。私の後ろに回って」
(落ちてくるソーラーパネルは縦回転だけじゃない)
「わかったアル」
最初に投げられたいくつものソーラーパネルが社とエネミーの周囲に降り注ぐ。
(沙田くんの言葉と、私がいまいるこの距離から計算すると、約五秒後、空の上でひとつ目のネットと衝突かる)
縦回転のソーラーパネルは社の弦をいとも簡単に斬り裂いてきた。
(とうぜん軌道なんて変えられない。いいえ、変える隙さえ与えられない。私たちがソーラーパネルの落下点から避けるしかない……)
「エネミー。こっち」
社はべとべとと一体化しているエネミーの手を引いた。
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だいだらぼっちは、また縦回転でソーラーパネルを放り投げた。
こいつ殻が剥がれるたびに身動きが速くなってる。
「九久津。こいつあきらかに雛とエネミーを狙ってるよな?」
「だね」
寄白さんと九久津の意見も同じだ。
だいだらぼっちは社さんとエネミー狙いだ。
だいだらぼっちの両肩は草や木が羽毛のように茂っている。
両足はゴーレムのように硬そうな岩でできている。
ん? 人間でいう鎖骨のあたりが大きく窪んでいて、水が溜まっている。
なんとなくだいだらぼっちの姿形、全体像がはっきりしてきたな。
「だいだらぼっち。ある地域によっては山や湖、沼を作ったとされるアヤカシ」
「だから本体も自然由来の物で構成されている。木や草、岩なんか。だから初期の泥に覆われた状態から殻が剥がれ落ちて本体が現れる。ただし本体の見かけは多種多様。人のホクロの位置が違ったりするように、だいだらぼっちも草や木の生える位置や岩の種類や形もそれぞれ。そういうことだ。沙田」
俺への説明だったのか。
泥の殻で覆われていた本体は、人間が想像するような「自然」の物で出来てるのか。
だいだらぼっちは、まだ手つかずのソーラーパネルの群れに向かっていった。
だいだらぼっちが顔を真横に二回振ったときすべての泥が剥がれ落ちた。
俺たちを睨む眼。
だいだらぼっちの顔は、いくつかの横縞が重なった地層のような岩でできていた。
そこに目と鼻の口と耳がある。
頭部はまるで森のように木々が生えている。
人間の髪ならフサフサ、自然なら鬱蒼。
胸元から腹の腹筋あたりも、硬そうな岩だ、これはゴツゴツってかんじ。
腰蓑のような物が巻かれていて、ここも緑色の樹木や草木でできている。
泥だけだったころよりも、なんていうか、ああ、これが上級アヤカシの姿なんだなって思わされる。
感動さえしてしまう。
「だいだらぼっち。元々はそれなりに希力も多く含まれていて人間を敵視するアヤカシじゃなかった。人間側も、だいだらぼっちには敬意を表し、供物を備えたり、存在を讃える祭事だってある。自然を司るアヤカシはフォークロアとの結びつきも強い」
いまの環境問題とか考えれば……なんとなく理解できるわ。
この、だいだらぼっちには、今どれほどの希力が含まれているのか? 反対に負力、なかでも動的負力がこの体の大半を占めてそうだな。
なんかこのだいだらぼっちがソーラーパネルを武器に使ってるのって皮肉だな。
まるで自然にこんな物はいらないってメッセージみたいだ。
そういう意図なのか?
人は朝日とともに起き、日が沈めば眠る。
かつて人はそんなサイクルで生きていた。