第41話 ラプラス


 卒倒感そっとうかん離人感りじんかんを同時に体感してるみたいだった。

 俺はまるで他人事のように自分おれの意識が遠のいていくのを感じた。

 意識が遠のいてるのに鮮明に意識・・を保ってるってどういう状況だよ? だいたいなんで俺は「卒倒感」と「離人感」なんて言葉を知ってるんだ? 第三者からは俺が茫然自失ぼうぜんじしつしてるように映ってるだろうな。

 そう、俺は今このときこの光景を第三者として見ていた。

 俺の体から気体とも呼べないエクトプラズムのようなものが飛び出して二手に分かれた。

 「きた!!」

 九久津が叫んだ。

 く、九久津はこれを待っていたみたいだった。

 きっと校長と寄白さんもだろう。

 そんなみんなの表情が見えた。

 寄白さんは一度微笑んでからすーっと瞼を閉じた。

 《我々は知らない。知ることはないだろう》

 

 この空間に重低音の言葉が木霊した。

 これは誰の声だ? 俺の中から出てる声なのか?

 「ラプラスの言葉だ」

 

 九久津のゴーレムの憑依が解けるとその顔に血の気が戻ってきた。

 どことなく希望を感じさせる表情をしてる。

 {{ツヴァイ}}

 この空間に白装束を着たもうひとりの沙田おれが出現した。

 な、なんだ? 俺がた。

 とたん死者に向かって黒い衝撃波を放つと、瞬時に死者の右半分が消し飛んでいった。

 あまりのスピードに左半身だけの死者は右半身を喪失うしなった自覚すらないようだった。

 左半身が右半身を見て初めて体の欠損に気づいている。

 自分でいうのもなんだけど名医いしゃが手術したようにきれいな傷口だ。

 死者はやっと現実と思考が重ったようだ。

 

 『コワス』

 死者は高速で浮遊しながら激昂したようにおれに直進してきた。

 だけどおれは空間を飛び越えたように瞬間的に死者の背後に周りこんでいる。

 死者は混乱していた。

 それもそうだろう死者が到着したその場所におれはもう居なかったんだから。

 つまりはおれは死者の攻撃スピードよりも速く動いたことになる。

 おれは死者のまうしろから黒い衝撃派を細かく分散させて機関銃のようにして撃った。

 散弾したすべての衝撃派が死者の体を貫通していった。

 俺はよくわからないままにおれと死者の戦いをただ見ていた。

 『……』

 死者は穴だらけの自分を見回して硬直した。

 死者には目という器官はないけどすべての物事がえているみたいだ。

 おれの攻撃で体の総面積の三分の二を失ったことに今気づいたのか? 俺からみれば死者の動作が鈍っているのは一目瞭然だった。

 これって外野のだからこそ気づけたことだけど。

 

 「死者は虎の尾を踏んだのかもしれないわ?」

 校長はあっけにとられながらもおれに大きな期待を寄せている。

 これが俺にあるっていってたアヤカシと戦う力、か?

 九久津はおれ死者の戦闘ではなくまったく別の方向を見ている。

 「あっ、あれは……?」