事務所にはファンたちから様々なプレゼントが贈られてくる。
だがそのすべてが本人たちの手元に渡るわけではない。
金属探知機で金属反応がでれば開封。
生物はすぐに破棄。
そのご数人のスタッフが目視したあとに、マネージャーを通して初めてメンバーたちの元へと運ばれる。
「これ、今日のプレゼントです」
マリはその言葉に目もくれずスマートフォンを操作していた。
「ブランド物と貴金属以外は棄てといて」
「いちおう、これも見てください」
「なに?」
それは拙いながらに子どもが作ったと想像できる、色とりどりの模造紙を貼り合わせたマリの紙人形だった。
「はっ!? そんなもんいらねーよ!!」
マリは見向きもせずにその紙の人形をごみ箱に放り込んだ。
「ごみみてーなクオリティなんだからごみ箱がお似合い」
そんな行動に慣れているマネージャーは無言を貫いている。
「……」
「ところで初動でた?」
「はい。十万枚です」
「たったそれだけ。デイリーは九万だったじゃない?」
「はい。ですので締日までにプラス一万枚しか売れなかったということです」
「なにそれ?」
「初回限定盤は特典がつきますから」
マネージャーは歴代特典が陳列されている棚を指さした。
アイドルグループ『オネット』はデビュー当時から初回限定盤のCDのみメンバーのフィギュアを付属してきた。
「たかが私たちの人形欲しさに九万かよ。曲に興味もってもらえないならワンシーズンに勝つなんて夢のまた夢だな」
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フィギュアは棚の上でずっとずっとその様子を見ていた。
わたし・・・I doll・・・アイ ドール・・・“ワタシは人形”
けれど『マリ』ちゃんのいる『オネット』もしょせん操り人形なのよね。
『オネット』が世間から棄てられるのも早そう。