第197話 秘めた想い


リッパってなんだ? ロロジストってなんだ? なんなんだー!? 早く検索してー!!

 結局ここでパフェを食べたのは寄白さんとエネミーだけだった。

 社さんにも訊いたけど――私は食べない。って一言。

 昨日もパフェは嫌いではない・・・・っていってたからな。

 らしい、じつに社さんらしい。

 逆に社さんがパフェ食べるイメージがない。

 ――私はブラックコーヒー。みたいなイメージしか浮かばない。

 リッパロロジストがなんなのかを直接訊いてみてもいいけど果たしてそれを訊いていいジャンルなのかもわからない。

 ――うわっ!? なにこいつそんなことも知らないの?系の質問だったらハズいし。

 俺も、まあ、こんな状況でパフェなんて食べてられねーってことで頼まなかった。

 いや、ほんとは客の女子に見られたらハズいってことがいちばんの理由なんだけど。

 でも寄白さんもエネミーも満足したようで良かった。

 二階は相変わらず人でいっぱいだ、あっ、あれっ!? 

 見慣れた顔が……? 店の二階にやってきたのは校長だった。

 

 お盆を小脇に抱えた店員が俺らのいるほうに手のひらを向けた。

 校長が俺らのことを訊いて店員がそれを教えてたって状況だろう。

 校長は俺らを見つけると手を上げて合図してきたから俺も手を振り返した。

 そのまま歩いてこっちにくるのかと思ったけど校長は手すりに手をかけて階段の下をのぞき込んでいる。

 その角度でも誰かと話しているのがわかった。

 なんだ? あっ、まさか校長もパフェ注文してるのか? 校長だって年頃の女子その可能性は多いにある。

 そうに違いない、あれっ? 校長の背中越しに見慣れた顔がもうひとつ、え、えっ? な、なぜだ? 俺は自分のスマホをタップした。

 暗転してた画面がパッと明るくなったけどそこになんの変化もなかった。

 いちおう他に俺への連絡手段になりそうな個所をチェックしてみたけどやっぱりなにもない。

 だよな~俺が見落としたのかと思って焦った。

 ずっとスマホに触れない状況だと思ってたんだけど違うのか?

 「あー!!」

 エネミーが俺の疑問にさらに疑問を上乗せしたように声を上げた。

 そして一言――九久津アル!! と指差した。

 

 同時に店内の女子の大半が九久津に釘づけ!! 

 イ、イケメン強し。

 辺りがざわざわしている。

 てかエネミーと九久津はすでに顔見知りなのか?と思っていたら急に社さんがおどおどしはじめた。

 こんなに慌てる社さんもめずらしい。

 右と左のどっちに振り向こうか迷った挙句、結局その位置ですこしだけ肩を落としてうつむいた。

 ん……? どういうこと? いったいなにが? だって社さんが怪我するまで九久津とはバディだったんだよな? さっぱり状況がわからない。

 校長と九久津は俺らが座っているテーブルへとやってきた。

 「九久津。毛先を遊ばせてるアルな?」 

 「そうかな? 俺の毛先ってガチガチに働いてると思うけど」

 九久津エネミーに対してその受け答えをするとは意外とやるな。

 社さんは前髪のあいだから九久津をチラ見している。

 えっ!? 

 うそ!? 

 そ、そうなの? 昨日、病院に近づかなったのもそういうことか。 

 そうだったのか~そういう理由ならば社さんのあの行動の理由もわかる。

 俺はひとり納得した。

 九久津は社さんの気持ちにそれ気づいていない。

 イケメンはモてるの法則は正しいが鈍感だ。

 

 「きみが真野エネミー? ちゃん?」

 「そうアルよ」

 「話だけは聞いてるよ」

 「うちもアルよ」

 なんだ初対面か? ってことは例の儀式をおこなったことを聞いただけか。

 それもそうかエネミーはバシリスクの戦闘のあとに生まれたんだから。

 入院していた九久津にはエネミーと会う機会はない。

 九久津は俺と寄白さんと校長に――迷惑かけた。と一言謝った。

 俺たちはそれぞれで――気にするな。の意味の言葉を返した。

 これで後腐れなしだ。

 九久津は社さんを見る。

 「雛ちゃん。あれ・・から会うのは初めてだね?」

 「えっと、うん。そう、だね。けど、ほらスマホでは」

 あ、あの、社さんがガチガチになってる。

 こ、これは少女漫画だな。

 九久津気づかないのか? というよりあれか? 幼馴染だから近すぎてなにも思わない系。

 しょ、少女漫画すぎるだろ!!

 

 「元気だった?」

 「うん。九久津くんはもう治ったの? あの、バ」

 あっ!? 

 社さんらしくない、今バシリスクの「バ」をいってしまいそうになったらしく慌てて口元を押さえてる。

 完全無欠っぽい社さんがすげー身近に思えた。

 なんかふつうの女子高生っぽい。

 ただ、かっこで「美人の」というのをつけ加えておこう……。

 でも、美人つけたらふつうじゃねーな。

 「俺もうすこしだけど。今日は抜け出してきた」

 「そ、そうなんだ。あ、あんまり無理しないでね?」

 「うん。まあ、病院でずっと黙ってるわけにもいかないし」

 「だ、だよね」

 

 アニメ好きのエネミーは俺に思わせぶりな表情を見せた。

 今、ニカって笑ったな? ただそれはほんわかした笑顔だった。

 こ、こいつ、この瞬間に社さんの想いに気づいたな。

 エネミーのあなどりがたし鋭さよ? これがアニメが授けし洞察力か? エネミーラブコメも恋愛系もきっちり抑えてるな。

 「沙田、返信できなかった理由はあとで話す」

 「あっ、ああ、わかった」

 やっぱメール届いてたのか? けど返せない理由があったってことか。

 俺は九久津の考えることにハズれはないと思ってるから、その意図をあとでゆっくり聞こう。

 「店に入ったところで偶然、九久津くんに会ってさ~。だから一緒にと思ってね」

 校長はどうして九久津と入店してきたのかの経緯を説明した。

 一緒だったのは偶然か。

 まあ、前もって集合時間は知らせてあったし同じ目的地に向かってきたんだからそんなこともあるよな。