第463話 中継点


フード付きの黒いローブの者は守護山の麓であり、田んぼから少し離れた場所にいた。

 沙田たちのいる場所からまっすぐ後ろには社たちがいて、フード付きの黒いローブの者がいる地点を頂点に三点を繋ぐとちょうど二等辺三角形になる。

 

 木々の焼け焦げた臭いはこのあたりまで漂ってきていた。

 (山の火が消えたか)

 煙だけはなにひとつ恐れることなく、フード付きの黒いローブの者へと向かっていく。

 フード付きの黒いローブの者は白煙をかわしながら、一歩、また一歩と足を進める。

 目の前に広がる田んぼの手前は、わずかに舗装されてはいるが荒れ地に近い。

 伸び放題の草はさまざまな背丈で茂っていた。

 (好い線は行ってた)

 草木の中にいる虫の声に混ざって羽音がする。 

 クワガタやカブトムシが飛んでいるようなブンブンという羽の羽ばたき。

 フード付きの黒いローブの者を出迎えるように、羽音が近づいてくる。

 フード付きの黒いローブの者の眼前で、ホバリングしているのは五体の妖精だ。

 

 「さあ、持ってこい」

 妖精が編隊を組んでいままさに飛び立とうとしたとき、フード付きの黒いローブの者は五体いるうちの一体を鷲掴みにした。

 その一体だけは、他の四体よりも一回りも、二回りも小さい体格だった。

 フード付きの黒いローブの者の手から、妖精の首より上だけが出ている。

 妖精はフード付きの黒いローブの者の手の中で蜘蛛の巣にかかった虫のように、ブブブと音を立てながら怯えた目で見ている。

 

 「おまえたちは、いけ」

 フード付きの黒いローブの者の命に従い四体は、飛び立っていった。

 

 フード付きの黒いローブの者がおもむろに手を開くと、手のなかに収まっていた妖精は恐怖からなのか身動きひとつできないでいる。

 妖精には六枚の羽があって、他の四体にはない特徴がみられる。

 

 フード付きの黒いローブの者は妖精の六枚あるうちの羽の一枚をめくり羽の根元を凝視した。

 羽の付け根から縦線が、一本、二本、三本、四本、五本と規則正しく並んでいる。

 (第五世代か)

 「自覚はないようだが、おまえはあいつらよりも新しい種」

 フード付きの黒いローブの者の言葉を理解できないまま、妖精は手のひらでおとなしく留まっている。

 「きたか」

 フード付きの黒いローブの者に向かってピンポン球くらいの真っ黒な髑髏を抱えた妖精を筆頭に、残りの三体も手ぶらのままで戻ってきた。

 ピンポン球ほどの真っ黒な髑髏の額には、充血したように真っ赤な目がある。

 「いけ」

 フード付きの黒いローブの者は手のひらを掲げて第五世代の妖精を放った。

 第五世代の妖精はヨロヨロしながら、仲間の輪に加わる。

 フード付きの黒いローブの者の空いた手のひらに、ピンポン球くらいの真っ黒な髑髏を置く。

  

 (百年ひゃくねん蟲毒こどくの蓋はカリフラワー状の形状になっていてこの髑髏ふたを親機と子機に分けて使うことができる。額にある赤い目が親機の印。子機は田んぼの中。親機を破壊しなければ負力の増幅は止まらない。田んぼのなかに蓋があるという推理はあながち間違いじゃない。ただしそれは中継点でしかないがな)

 フード付きの黒いローブの者の顔の中心にあるブラックホールの中から

百年ひゃくねん蟲毒こどくが姿を現した。

(子機がいくら壊されても親機がある限り負力の流れは止まらない。親機を回収してはじめてそれは止まる)

 踏みつぶされた小動物のような声をあげたのは、フード付きの黒いローブの者の手のに真っ黒な髑髏を置いた妖精だった。

 残りの四体も悲鳴のような声を残し、排水溝に流れる水のように百年ひゃくねん蟲毒こどくの中に吸い込まれていった。

「蟲毒に参加でもするのか? 誰であろうと弱い者は壺に喰われるだけ」

 フード付きの黒いローブの者は百年ひゃくねん蟲毒こどくに小さな黒い髑髏を差し込んだ。

 髑髏から髑髏が生まれて同じ大きさになる。

 ふたつの髑髏からさらに髑髏が生まれ百年ひゃくねん蟲毒こどくの蓋はボコボコ増えカリフラワー状になった。

 フード付きの黒いローブの者の顔の中心のブラックホールから放たれた光。

 映写機のように空中に映像が現れた。 

 グラフのようになっていて様々な数値がある。

 

 (泥田坊とだいだらぼっち。レッドリストの唐傘お化け。もっと緻密な採取が必要か)

 フード付きの黒いローブの者が空を見上げた、ブラックホールと銀河が見つめ

合う。

 UFOのような光の集合体は、そのまま空の奥で浮遊している。

 (この瞬間を記録ったところで判定に影響はないだろう)

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