第464話 変化


 だいだらぼっちが、のそっと起き上がった。

 金色の龍を纏ったその人は、俺よりもあっち・・・のだいだらぼっちに狙いを定めたみたいだった。

 偶然だけど注意を逸らせた。

 だいだらぼっちは、不気味なほどに静かでさっきまでジタバタしてたのが嘘のようだ。

 肩から蔦の鞭をとって、今度は両手で器用に鞭を振っている。

 まるで大縄跳びの回し手のようにビュンビュン空を裂く。  

 九久津が腕を押さえながら俺のほうへと近づいてきた。

「沙田」

「九久津。大丈夫か?」

「え、沙田、おまえ」

「どうした?」

どうした、ど・う・し・た。

ん? どうしたって言ったのは、俺、か?

これってやっぱり俺とだいだらぼっちとの召喚の軸がズレたのか。

「沙田。声が戻ってるけど」

「ああ、そうみたいだな。さっきのだいだらぼっちのパンチくらってからだと思う」

俺がなぜ、だいだらぼっちになったのか。

いまここで九久津に九久津のアニキの存在をにおわすのはやめておこう。

「沙田。なんでだいだらぼっちになんかになってんだよ?」

だよな。

訊かれると思った。

「知らないうちに何かがおこってこうなった。俺にもよくわからない」

じっさい、知らないうちに、俺がだいだらぼっちになったってのは本当で、

心当たりがありそうなことは社さんに訊いて教えてもらっただけだから。

「まあ、いまはこんなことしてる場合じゃないか」

「九久津あの人知ってるのか?」

「どっかで見たことはある。でも、会ったことはないな。名前はなんだっけ」

「黄金井こがねいシャナ。実質、防衛省のトップだよ」

「こがねいしゃな」って言うんだ。

寄白さんも、足を引きずりながらここまできていた。

ふたりとも、そこまで重傷ってわけでもない、良かった~。

「あ、そうだ!! でも美子ちゃん、なんでそんな人がここにいるんだろう?」

「ここにくる途中にも防衛省の職員がいたからな。別件でなにかあったか、あるいは、その別件ってのがだいだらぼっちやつの出現だったのかもな」

 ああ、たしかに、タクシーの中から自衛隊っぽい車両を見かけたな。

 スマホの電波が途切れてしばらくしてからだっけ。

 あそこにいた人たちの仲間か。

 ただ、寄白さんの言うように、あそこで何をしてたのかは、俺たちにはわからない。

「にしては、あの人がここに介入してくまでタイムラグがありすぎかな」

九久津の推理はもっともだと思う。

こうなる前に、きててもおかしくない。

というかそれなら泥田坊のときから助けにきてくれよってかんじだし。

やっぱり他で別の業務があったってことか。

「どのみちこの六角市に、わざわざ防衛省の職員が足を運ばなきゃならないことがあるってことだろ?」

「まあね。痛っ。でも、まさかだいだらぼっちのあの鞭にやられるとは。美子ちゃんわりとふつに歩いてるけど大丈夫?」

「ちょい怪我くらいかな。でも、もうちょっとすれば、だいだらぼっちにも効いてくるだろ?」

?

なにが「きいて」くる、なのか?

「でも、その前にあの人が退治しちゃうんじゃない」

「それならそれでいいさ」

 ふたりは何のことを言ってるんだろう? だいだらぼっちは、長縄跳びのように鞭を振り回しつづけている。

 金色の龍を纏ったその人はそれをぜんぶ躱していた。

 ああ、よく見れば、だいだらぼっちの鞭がこっちにこないようにわざといなしてるのか。

 だいだらぼっちは、だいだらぼっちで全体的に動きが早くなってきている。

 あのデカさで、あの動きって。

 鞭を振るスピードも、さっきいるあがってきてるな。

 だいだらぼっちが、鞭を振った合間に一回、地面を踏みつけた。

 金色の龍を纏った人は、なんなく鞭を躱す。

 ここでまた、だいだらぼっちが地面を踏んだ。

 なんだ? なにかの儀式か?

 だいだらぼっちは、ダンスの一部のように足を交差させたりしてリズムを刻み地を踏んだ。

 裏のリズムで鞭を振る。

 だいだらぼっちは、またなにかのステップを踏んだ。

 金色の龍を纏った人をおそらく、だいだらぼっちのの、その定期的で規則的な動きに気づいている。

 あ!?

 だいだらぼっちが、振っていた鞭の先が数本に分かれた。

 いま、いろんな変化がおこっている。