番外編『眩耀の刃』


ウスマがはじめて転生した場所は祖国ではない別の国だった。

 なお爆弾あめの降るどこか。

 同じ国のなかで体制派と反体制派が争っていた。

 国民のなかにも好戦的な者が存在していて自ら銃を握っている。

 

 ウスマは崇拝者がここに存在させた意味を探った。

 おそらくは地獄の一区画にすぎなかった祖国とは別の地獄を見せるためだろう。

 相変わらず死は身近にある。

 死体が自生しているこの場所でもあの国と同じように極楽を見る煙を吸い、天に昇る注射を打っていた。

 ウスマは前世の記憶を持ちながらときおり聞こえる崇拝者のみちびきに従った。

 

 崇拝者に賜った刃はいまだ飾りにすぎない。

 これを振るう時と場所はウスマにはわからない。

 ただこれを携えてさえいれば強くあれる気がしていた。

 街のいたるところで火柱が上がっている。

 大儀のために自分ばくやくを散らす者だ。

 

 なんのために? なにを守るために命を捨てるのか? ウスマは自分の体の異変に気づく。

 空からまた爆弾あめが降る。

 これは……。

 爆風とともに飛んでくる火花と瓦礫の破片がゆっくりと見えた。

 こんなは体験はいままでに一度もなかったことだ。

 もしマリアに向かってくるFOXばくだんに対してこの感覚が発揮できていたのなら……。

 マリアの前に回り込むことも可能だったのではないか? 妹に守られるなんて恥を晒す前に己を盾にできたのではないか?

 マリアに守られたことを恥じながら秒速千メートルの銃弾がウスマの体のあちこち貫いていく。

 あっけないほどの死がまたウスマに訪れた。