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第330話 証券コード
『あと私が伊万里にあげられる情報はっと。外務省がかなりの数の新約死海写本を手に入れてるってことくらいかな。一…
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第329話 短縮URL
スマホの画面が切り替わった。 ふと寄白さんを見てみると、今、まさに画面をタップする直前だった。 ……ん? …
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第328話 それぞれの接点
『伊万里。おおまかな概要はそのPDFのとおり』 わずかなあいだで戸村伊万里のもとに同僚からのメールが返…
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第327話 築年数
戸村伊万里の指先は両開きのファイルの境目を交互に行ったり来たりしている。 (この六校は六角第一高校から順番…
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第326話 整理
戸村伊万里は六角駅前にあるホテルの一室で一卵性双生児いもうとの伊織と電話を終えそのまま駅前の街並みを見下ろして…
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第325話 知らないところで知らない人が死んでも誰も知らない。
「朝の話では姉と一緒に大地震に遭遇したとだけいってましたよね?」 (誰か身近な人を亡くしてるとは思ってたけど…
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第324話 傾聴(けいちょう)
九久津は国立六角病院のロビーのソファーにひとりで座っていた。 「こんばんは」 静寂を裂いたのは九久津の耳に…
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第323話 「伊織」と「伊万里」
『繰さんにはちょっと強引に情報提供したから』 「伊織。寄白繰にそんな情報を与えたの?」 『そうだけど』 …
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第322話 灰色の町―戸村伊万里(とむらいまり)―
私は父を尊敬している。 健やかなるときも病めるときも、ふたりもそんな誓いを立てたはずだ。 損得勘定なく、と…
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第321話 燎原の火(りょうげんのひ)
戸村伊万里はカーテンのあいだからそっと街の景色を見下ろした。 窓ガラスに映った自分の顔の向こうに街の灯りが…